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2024.11.17

採用ノウハウ

「収入の壁」働く人たちの本音と企業の採用課題

労働者も人事担当も雇用主も聞いたことはあるけど意外と詳しく理解されていない収入の壁。

「収入の壁」とは、日本の税制や社会保険制度に基づき、一定の年収を超えると税金や社会保険料が増加し、手取り収入が実質的に減少したり増加幅が小さくなったりする現象を指します。この現象は特にパートタイム労働者や主婦、副業を持つ人々に影響を及ぼします。以下収入によって影響を及ぼす壁の詳細を額面ごとに分かりやすく説明いたしました。

 

103万円の壁

対象: 配偶者がいるパートタイム労働者(主婦・主夫など)

配偶者の年収が103万円以下である場合、扶養する側(主に夫や妻)の所得税が減額される「配偶者控除」の対象になります。

 

103万円を超えるとどうなるか

配偶者控除が受けられなくなり、扶養者側の税負担が増加しますので配偶者が103万円を超えないよう労働時間を制限するケースが多いです。ただし、配偶者自身の手取り収入は変化しません。

 

106万円の壁

対象: 社会保険の適用が拡大された企業(従業員が101人以上の企業)で働くパートタイム労働者

年収が106万円を超えると、厚生年金や健康保険に加入する義務が生じます。(一定条件を満たす場合)

 

106万円を超えるとどうなるか

社会保険料(健康保険料や年金保険料)が引かれるため、手取り収入が減少しますので短時間労働者の中には、社会保険料を回避するために労働時間を調整する人もいます。

 

130万円の壁

対象: 配偶者の扶養に入っている人(主に国民健康保険や国民年金の加入者)

配偶者の年収が130万円以下の場合、配偶者の扶養として健康保険料や年金保険料が免除されます。

 

130万円を超えるとどうなるか

扶養から外れるため、国民健康保険や国民年金の保険料を自分で負担する必要が生じます。130万円を超えると手取りが大きく減少するため、ここで収入を調整する人も少なくありません。

 

 

これらの「壁」は、税制や社会保険制度の設計が段階的であり、特定の年収を境に急激な負担増加が発生することが原因です。結果として、収入を増やすために働くことが必ずしも経済的なメリットに直結せず、「これ以上働くと損をする」という現象が発生します。

 

収入の壁における企業の採用課題

1.労働時間の制限による人材確保の難しさ

「103万円の壁」や「130万円の壁」により、パートタイムやアルバイト従業員が収入を抑えるために労働時間を制限する傾向があります。そのため、企業側はシフトの穴埋めやフレキシブルな対応が必要になり、人材配置が難しくなります。

 

2. 優秀な人材の確保の難易度

特に主婦層や副業従事者などのパートタイム労働者は、高いスキルや経験を持ちながらも「壁」を理由に働く時間や収入を抑える場合があります。これにより、企業はこうした人材を十分に活用できない問題が生じます。

 

3. 従業員のモチベーション低下

労働者が「収入の壁」を意識して働くことで、昇給や追加業務のオファーを断るケースが増え、モチベーションの維持が困難になる場合があります。

 

4. コストと管理の負担増

労働時間や収入を「壁」以下に抑えるため、パートタイム労働者を複数採用する必要があり、管理コストが増加します。また、シフト管理や働き方の調整に追われる可能性があります。

 

収入の壁に対する企業の採用対策

労働者の時間や収入の希望に合わせた雇用形態(短時間勤務、曜日固定勤務など)を導入することは、労働者の意欲を引き出すとともに、長期的な雇用を促進します。また、シフト内で業務を効率的に分担し、「壁」を超えない範囲で業務量を調整するなど、労働者の希望に合わせながら業務効率を図ることも大切です。

企業は労働者が「106万円の壁」や「130万円の壁」を気にせず働けるように、社会保険を適用した雇用契約を提供し、安定的な雇用環境を整備することが求められています。

この場合、従業員に対して社会保険のメリットを説明し、安心して長時間働ける環境を作ることが重要です。金銭的な報酬以外に、柔軟な勤務形態や福利厚生(例:託児所、交通費補助、社員割引など)を強化することでも、労働者の満足度を向上させ、モチベーションを維持することができます。

「収入の壁」を気にせず働くメリットについて、労働者に情報提供を行うことで、時間や収入の制約を乗り越える意識改革を企業は支援していく必要があり、社会保険や税金の仕組みを理解し、将来のメリットを見据えた行動を促すことが労使間双方にとって効果的です。

人材の確保を短期的に解決しようとするのではなく、長期的な採用計画を立てて労働者の定着を図り、従業員のキャリアパスを見据えた採用を行うことで、壁に縛られず働き続けてもらう仕組みを構築することも採用の成功の鍵と言えるでしょう。

「収入の壁」は労働者側の問題であるだけでなく、企業側にも大きな課題をもたらします。しかし、柔軟な雇用制度や労働者のニーズに合わせた対応を取ることで、壁を乗り越えることは可能です。また、労働環境の改善は企業のブランドイメージの向上にもつながり、長期的にはより優秀な人材の確保に寄与します。

「壁」を超えるためには、労働者と企業が相互に協力し、最適な雇用形態を模索する姿勢が重要です。このような取り組みが進むことで、働きやすい社会の実現に近づくでしょう。

 

収入の壁に関することでご不明点やご相談したいことがございましたらお気軽にお問い合わせください。

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