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転職理由ランキングトップ10 〜最新データが示す残酷な真実〜

現在の日本社会において、労働力人口の減少とそれに伴う慢性的な人手不足は、あらゆる業界・企業にとって最重要の経営課題となっています。特に若手層を中心とした「転職の一般化」が進む中、優秀な人材をどのようにして自社に惹きつけ、そして長く活躍してもらうか(リテンション)は、企業の存続と成長を左右する生命線と言っても過言ではありません。
「社員が突然、退職届を出してきた」「最近、若手のエース級社員が次々と競合他社へ移ってしまっている」「ベースアップ(賃上げ)を実施したにもかかわらず、なぜか社員のモチベーションが上がっていない」。もし皆様の会社でこのような事象が起きているのであれば、自社の人事制度や職場環境が、現代のビジネスパーソンが求める「働く価値観」とズレを生じている危険性があります。
社員が会社を去る時、建前としては「キャリアアップのため」「新しい業界に挑戦したいから」といったポジティブな理由を語ることが多いでしょう。しかし、その裏にある「本当の退職理由(本音)」を正確に把握しなければ、効果的な組織改善は不可能です。
本記事では、様々な最新調査データをもとに、転職者が会社を見限った「本当の理由」を徹底解剖します。 数値データやランキングという客観的な事実に基づき、世代別の傾向や、背景にある社会情勢(法改正など)を読み解きながら、経営層や人事部門が明日から取り組むべき具体的な組織改善のアクションプランまでを網羅的に解説いたします。
転職理由ランキングTOP10
第1位:給与が低い・昇給が見込めない(36.6%) ※前年比+3.0pt、5年連続1位
第2位:労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある)(26.3%) ※前年4位から上昇
第3位:個人の成果で評価されない(22.8%) ※前年18位から急上昇(+11.9pt)
第4位:尊敬できる人がいない(20.9%) ※前年9位から上昇
第5位:社内の雰囲気が悪い(20.7%) ※前年3位から下落
第6位:人間関係が悪い/うまくいかない(20.2%)
第7位:会社の評価方法に不満があった(19.7%)
第8位:肉体的または、精神的につらい(19.2%)
第9位:業界・会社の先行きが不安(19.0%)
第10位:昇進・キャリアアップが望めない(18.7%)
第10位:スキルアップしたい(18.7%)(同率)
この総合ランキング結果から、現在のビジネスパーソンが会社に対して何を不満に思い、何を求めているのかという明確なトレンドが3つ浮かび上がってきます。それは「待遇の絶対額に対する不満」「働き方(ワークライフバランス)への渇望」、そして「評価と処遇に対する『納得感』の欠如」です。
不動の1位は5年連続「給与が低い」〜賃上げブームの裏に潜む罠〜
総合ランキングの第1位は、5年連続で「給与が低い・昇給が見込めない」(36.6%)となりました。前回の調査からさらに3.0ポイント上昇しており、2021年以降、毎年30%超の回答割合を維持し続けています。
ここで多くの経営者や人事担当の皆様は、一つの疑問を抱くのではないでしょうか。 「昨今はニュースでも『初任給の引き上げ』や『過去最高水準のベースアップ』が大々的に報じられている。当社でも無理をして給与水準を上げたのに、なぜいまだに『給与が低い』が退職理由のトップなのか?」と。
この矛盾を解き明かす鍵は、マクロな経済環境とミクロな個人の生活実感のギャップにあります。
どれだけ企業が努力して月給を数千円〜数万円引き上げたとしても、それを上回るスピードで物価が高騰しています。食料品、光熱費、日用品などの生活必需品の値上がりが直撃しており、「給与は少し上がったが、生活はむしろ苦しくなっている」というのが多くの社員の偽らざる実感です。結果として、より高い給与水準を求めて転職市場に足を踏み入れる人が後を絶ちません。
また、1位の項目が「給与が低い」だけでなく、「昇給が見込めない」とセットになっている点に注目してください。現在の給与額そのものへの不満もさることながら、「この会社にあと5年、10年いても、給与が大きく上がる未来が見えない」という将来悲観が、退職の決定打となっています。 年功序列による微々たる定期昇給しか存在しない企業や、業績連動型の賞与が長年低迷している企業は、社員から「見切り」をつけられやすい状況にあります。
前年18位から3位へ大躍進!「個人の成果で評価されない」の衝撃
今回の調査において、経営・人事層が最も警戒すべきデータが、第3位にランクインした「個人の成果で評価されない」(22.8%)です。 前回の18位(10.9%)から一気に15ランクも順位を上げ、回答割合も11.9ポイント増という、全35項目中で最大の上げ幅を記録しました。
なぜ突然、評価に対する不満がこれほどまでに爆発したのでしょうか。そこには、昨今の企業動向に対する社員のシビアな視線が存在します。
前述の通り、人手不足解消のために多くの企業が初任給の引き上げや全社的なベースアップを行いました。しかし、これらは「全社員一律」の底上げです。 ここで不満を抱くのが、日々高いパフォーマンスを発揮し、業績に貢献している優秀な社員たちです。「自分はあんなに頑張って成果を出しているのに、大して成果を出していない同僚や、新しく入ってきた新入社員と給与が大して変わらない」という不公平感が一気に顕在化したのです。
つまり、企業側は「給与水準を上げたのだから満足だろう」と思っていても、優秀な層からすれば「成果が処遇に反映されない(=正当に評価されていない)」という強い不満に転化してしまったのです。
2023年3月期決算から、上場企業に対して人的資本に関する情報開示が義務化されました。これを契機に、ジョブ型雇用の導入や、成果主義・役割等級制度への移行など、企業の人事制度改革が進んでいます。世の中全体が「スキルと成果に基づく報酬」へシフトしていく中で、旧態依然とした年功序列や不透明な情意評価(上司の好き嫌いによる評価など)を続ける企業は、優秀な人材から真っ先に見捨てられるリスクが高まっています。
20代は「給与」よりも「労働時間」と「評価」をシビアに見る
年代別のランキングを紐解くと、ライフステージや価値観の違いが鮮明に現れます。特に、新卒入社から中堅へと差し掛かる「20代」のデータは、他の世代と一線を画しています。
30代・40代・50代のすべての年代で1位が「給与が低い」であったのに対し、20代だけは異なる結果となりました。
■ 20代の転職理由トップ3
1位:労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある)
2位:個人の成果で評価されない
3位:給与が低い・昇給が見込めない
20代の約半数(44.6%)が「労働時間への不満」を挙げてトップとなりました。この世代は、学生時代やキャリアの起点において、オンライン授業やリモートワークを当たり前に経験してきた「コロナ禍ネイティブ世代(Z世代)」です。
彼らは、「長時間労働や休日出勤を前提としなくても、仕事は効率的に成り立つ」という事実を肌で知っています。仕事だけでなく、プライベートの時間や自己研鑽を極めて重視する彼らにとって、「残業代で稼ぐ」という旧来の価値観はもはや魅力的ではありません。いかに効率よく働き、自分の時間を確保できるかという「タイパ(タイムパフォーマンス)」こそが、企業選びの最重要指標となっているのです。
さらに、2位に「個人の成果で評価されない」がランクインしている点も重要です。昨今の初任給引き上げにより、ベースの待遇には一定の満足感がある一方で、「若手だから」という理由で成果に見合った報酬やポストが与えられないことへの拒否感は、かつてないほど高まっています。
2024年4月に適用された「時間外労働の上限規制(2024年問題)」の影響も無視できません。物流や建設、医療など多くの業界で規制が強化されましたが、DX化などの業務改善が追いついていない企業では、「残業は禁止だが業務量は減らない」という矛盾が生じています。そのしわ寄せが現場の若手に集中し、「この環境では長く働けない」と見切られている可能性が高いのです。
30代・40代を蝕む「人間関係」と「組織風土」の病理
組織の中核を担う30代・40代。彼らの転職理由は、20代とは打って変わり、組織内の「人間関係」や「風土」への不満が色濃く反映されています。30代の1位は「給与が低い」(36.9%)ですが、特筆すべきは以下の急上昇項目です。
■ 30代の転職理由トップ3
1位:給与が低い・昇給が見込めない
2位:尊敬できる人がいない ※前回9位から急浮上
3位:個人の成果で評価されない
40代でも同様に、1位は「給与が低い」(39.6%)ながら、2位・3位のスコアが前回から10ポイント以上激増しています。
■ 40代の転職理由トップ3
1位:給与が低い・昇給が見込めない
2位:社内の雰囲気が悪い
3位:尊敬できる人がいない
中堅層に共通して急浮上した「尊敬できる人がいない」という理由は、企業にとって極めて深刻な事態です。30代・40代は、自らがマネジメントの重圧に晒される一方で、上層部(役員や部長クラス)の能力を最も冷静に評価できる立場にあります。
「上司が保身に走り、挑戦を阻む」「具体的な戦略がなく精神論ばかり」「疲弊しきった上司の姿に未来を描けない」。こうした「ロールモデルの不在」が、中堅層のモチベーションを決定的に奪っています。
30代での「ハラスメント」のランクイン(7位)や、40代での「雰囲気の悪さ」への不満は、人手不足による現場のギスギス感が限界に達している証拠です。心理的安全性の低い職場は、それだけで優秀な人材が流出する十分な理由となります。
50代の現実に迫る「外部環境への不安と雇用の安定」
ベテラン・シニア層である50代では、他世代にはない切実な特徴が見られます。1位は「給与が低い」(31.9%)ですが、特筆すべきは6位にランクインした「倒産/リストラ/契約期間の満了(20.3%)」 です。
50代で会社都合の退職が急増した背景には、日本企業における「早期・希望退職」の活発化があります。2024年の募集人数は前年の3倍に達するという報告もあり、企業側がビジネスモデル転換のためにシニア層の入れ替えを進めている実態が浮き彫りになっています。
50代にとっての転職は、やりがい以上に「自身のキャリアの最終コーナーをいかに安定して走り切るか」という、生活に直結した現実問題がトリガーとなっています。
退職理由のランキングは「自社の通信簿」
「なぜ人が辞めるのか」という問いに対し、表面的な答えは常に「給与」かもしれません。しかし、その深層には「不透明な評価」「時代遅れの長時間労働」「ロールモデルの不在」「ギスギスした風土」といった、構造的な病理が潜んでいます。
社員の退職理由は、個人のわがままではなく、経営陣に突きつけられた「組織体制に対する通信簿」です。個人の価値観が多様化する今、制度をアップデートし続ける企業と、旧態依然とした企業の差は開く一方です。
「人が辞めない、人が育つ、人が集まる組織」への変革。それは一朝一夕には成し遂げられませんが、データを直視し、一歩を踏み出すことで、必ず社員のエンゲージメント向上という形で報われるはずです。人材という最大の資本を守るため、今日から新たな一歩を踏み出しましょう。
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