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採用ノウハウ
【最低賃金1,000円以上時代突入】求人に使える補助金・助成金をご紹介
人材不足が深刻化する中、多くの企業が採用活動に苦戦しています。特に中小企業にとっては、全国どこでも最低賃金が時給1,000円を超え、人件費が高騰していることに加え、優秀な人材を獲得するための採用広報費も大きな負担となっています。求人サイトへの掲載、採用動画の制作、会社説明会の開催、SNS運用など、効果的な採用広報には相応のコストがかかります。
しかし、実は採用広報費を補助金・助成金で賄える可能性があることをご存じでしょうか。近年、採用活動の強化や人材確保を支援する公的制度が充実しており、これらを活用する企業が増加しています。本記事では、採用広報費に活用できる補助金・助成金の種類と、具体的な申請パターンを事例とともに詳しく解説します。
なぜ今、補助金活用が注目されているのか
採用市場は完全な売り手市場となっており、一人当たりの採用コストは年々上昇しています。中途採用では約134.6万円(2024年実績、マイナビ調査)、新卒採用でも約90万円(経団連調査2024年)のコストがかかるとされています。これには求人広告費、人材紹介会社への手数料、採用イベント参加費、社内の採用業務にかかる人件費などが含まれます。
特に知名度の低い中小企業の場合、大手企業と同じ土俵で戦うために、より多くの広報費を投入する必要があります。しかし、限られた予算の中で十分な採用広報活動を展開するのは容易ではありません。
こうした背景を受け、国や地方自治体は中小企業の人材確保を支援するため、様々な補助金・助成金制度を整備しています。これらは採用活動そのものだけでなく、採用広報や魅力発信にも活用できるものが増えています。
補助金を活用することで、本来なら予算の制約で実施できなかった採用施策を実行できるようになります。採用動画の制作、採用サイトのリニューアル、採用管理システムの導入など、中長期的に効果が見込める投資を行うチャンスとなります。
採用広報に活用できる6つの補助金・助成金
1.中小企業新事業進出補助金
中小企業新事業進出補助金は、中小企業が新たな事業領域、新市場・高付加価値事業への前向きな進出に取り組む際の費用を支援する制度です。
採用広報への適用ポイント
新たな事業に取り組む際の立ち上げ・販路開拓・PR・情報発信体制の整備を支援する制度です。新規事業立ち上げのための専門人材採用に関わる費用が認められる可能性があります。
- 補助率: 1/2
- 補助上限:最大9,000万円(大幅賃上げ特例適用時)※従業員数により異なる
- 対象経費:新事業に従事する専門人材採用のためのサイト制作・採用動画制作費、新サービス告知と連動した採用広報活動
2. IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業のITツール導入を支援する制度です。採用管理システム(ATS)やHRテックツールの導入に活用できます。
採用広報への適用ポイント
採用プロセスを効率化し、応募者とのコミュニケーションを強化するITツールが対象です。
- 補助率:1/2以内から最大3/4以内
- 補助上限:最大450万円(枠により異なる)
- 対象経費:採用管理システム、応募者管理ツール、自動返信システム、面接予約システムなど
3. ものづくり補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、革新的なサービス開発や生産プロセスの改善を支援する制度です。
採用広報への適用ポイント
新たな製品・サービス開発に必要な高度人材の採用に関する広報活動が対象となる場合があります。
- 補助率:1/2または2/3
- 補助上限:最大4,000万円(類型により異なる)
- 対象経費:専門人材採用のための広報費、技術者向け採用イベント開催費など
4. 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が販路開拓や生産性向上に取り組む際の経費を支援する制度です。
採用広報への適用ポイント
事業の持続的発展に必要な人材確保のための広報活動が認められるケースがあります。
- 補助率:2/3(一部3/4)
- 補助上限:50万円から200万円(類型により異なる)
- 対象経費:採用パンフレット制作、求人チラシ、採用Webサイト制作など
5. 人材確保等支援助成金
厚生労働省が提供する助成金で、魅力ある職場づくりを通じて人材確保を支援します。
採用広報への適用ポイント
働き方改革や職場環境改善と連動した採用広報活動に活用できます。
- 助成率:制度により異なる
- 助成上限:コースにより異なる(最大72万円など)
- 対象経費:採用定着に資する広報活動、就業環境PRのための広報費など
6. 地方自治体独自の補助金
多くの自治体が独自に人材確保支援の補助金を提供しています。
主な例
- 東京都「創業助成事業」:創業初期の人材採用費用を支援
- 大阪府「中小企業人材確保支援事業」:採用広報費の一部を補助
- 福岡市「スタートアップ支援補助金」:成長企業の採用活動を支援
各自治体の産業振興課や雇用労働課に問い合わせることで、地域独自の支援制度を確認できます。
申請パターン別・活用事例6選
実際に補助金を活用して採用広報を強化した企業の事例を、申請パターン別に紹介します。
パターン1:採用サイト✖️動画制作
事例A:IT企業(従業員30名)
求人広告に掲載するだけでは応募が集まらず、自社の魅力を十分に伝えられていませんでした。特に、社内の雰囲気や働き方、技術スタックなどを詳しく知りたいという求職者のニーズに応えられていませんでした。
活用した補助金
事業再構築補助金(新分野展開としてDX事業を立ち上げ)
実施内容
– 採用特化型Webサイトの制作(250万円)
– 社員インタビュー動画5本制作(150万円)
– 技術ブログシステムの構築(100万円)
– 合計500万円の投資に対し、補助金300万円(補助率2/3)を獲得
成果
– 採用サイト公開後3ヶ月で直接応募が月平均3件から15件に増加
– 動画経由での応募者の内定承諾率が70%と高水準
– 技術ブログが検索上位に表示され、認知度が向上
申請のポイント
新規DX事業の立ち上げに伴う専門人材の確保という文脈で、採用広報の必要性を明確に説明しました。事業計画書では、採用サイトが新事業の成否を左右する重要施策であることを数値目標とともに示しました。
パターン2:採用管理システム導入での活用
事例B:製造業(従業員40名)
応募者管理がExcelとメールで行われており、対応漏れや遅延が発生していました。優秀な候補者を他社に取られてしまうケースが増えていました。
活用した補助金
IT導入補助金
実施内容
– ATS(採用管理システム)の導入(初期費用50万円、年間利用料60万円)
– 応募者とのチャットボット連携(30万円)
– 面接予約自動化システム(20万円)
– 合計160万円の投資に対し、補助金120万円(補助率3/4)を獲得
成果
– 応募者への初回返信時間が平均48時間から2時間に短縮
– 面接設定のやり取りが自動化され、採用担当者の業務時間が週10時間削減
– 応募者の選考辞退率が35%から18%に低下
申請のポイント
ITツールによる業務効率化と応募者体験の向上を明確に示しました。導入前後の業務フロー図を作成し、具体的な改善効果を可視化したことが採択につながりました。
パターン3:採用イベント・説明会での活用
事例C:サービス業(従業員20名)
地方に本社があり、都市部の優秀な人材にアプローチする機会が限られていました。会社説明会を開催したくても、会場費や交通費の負担が大きく実施できませんでした。
活用した補助金
小規模事業者持続化補助金
実施内容
– 東京・大阪での会社説明会開催(会場費、交通費、宿泊費:計80万円)
– 説明会用のプレゼン資料・動画制作(40万円)
– 採用パンフレット1,000部制作(30万円)
– 合計150万円の投資に対し、補助金100万円(補助率2/3)を獲得
成果
– 説明会参加者数:合計120名
– そのうち30名が選考に進み、最終的に6名を採用
– 都市部からのUターン・Iターン採用が実現
申請のポイント
販路開拓の一環として、優秀な人材の確保が事業拡大に不可欠であることを強調しました。地方企業が都市部人材にアプローチする必要性と、その効果を具体的に説明しました。
パターン4:採用ブランディング総合施策での活用
事例D:建設業(従業員120名)
建設業界全体のイメージが「きつい、汚い、危険」の3Kで、若手人材の採用が困難でした。実際には働き方改革を進め、最新技術を導入しているにも関わらず、その魅力が伝わっていませんでした。
活用した補助金
ものづくり補助金
実施内容
– 採用ブランディング戦略の策定(コンサル費用:200万円)
– コーポレートサイト・採用サイトの全面リニューアル(500万円)
– 現場密着型ドキュメンタリー動画シリーズ制作(300万円)
– SNS採用広報の体制構築・運用支援(200万円)
– インターンシップ受け入れ体制の整備(100万円)
– 合計1,300万円の投資に対し、補助金650万円(補助率1/2)を獲得
成果
– 新卒応募者数が前年比3倍に増加
– 採用単価が約40%削減
– 従業員のエンゲージメントスコアも向上(社員が誇りを持って働ける環境に)
– 業界メディアに取り上げられ、企業認知度が向上
申請のポイント
最新建設技術(BIM/CIM、ドローン測量など)の導入に伴う専門人材の確保という観点から申請しました。技術革新と人材獲得を一体的に捉えた事業計画が評価されました。
パターン5:リファラル採用促進施策での活用
事例E:スタートアップ企業(従業員20名)
知名度が低く、求人サイトへの掲載だけでは応募が集まりませんでした。一方で、社員からの紹介で入社した人材は定着率が高く、活躍していました。
活用した補助金
地方自治体の創業支援補助金
実施内容
– リファラル採用促進のための社内ツール導入(50万円)
– 社員向けの会社紹介資料・動画の制作(80万円)
– リファラル採用説明会の開催(20万円)
– 紹介インセンティブ制度の設計支援(30万円)
– 合計180万円の投資に対し、補助金120万円(補助率2/3)を獲得
成果
– リファラル採用での入社者が年間2名から10名に増加
– 採用コストが1人あたり80万円から30万円に削減
– 入社後3ヶ月の定着率が95%に向上
申請のポイント
創業間もない企業が持続的に成長するために、社員ネットワークを活用した低コスト・高品質な採用手法の確立が必要であることを訴求しました。
パターン6:外国人材採用広報での活用
事例F:飲食チェーン(従業員200名)
人手不足が深刻で、特に調理スタッフの確保が困難でした。外国人材の採用を検討しているものの、多言語対応の採用広報体制が整っていませんでした。
活用した補助金
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
実施内容
– 多言語対応採用サイトの制作(英語、ベトナム語、ネパール語:150万円)
– 外国人向け会社紹介動画の制作(100万円)
– 海外人材紹介サービスとの連携システム構築(50万円)
– 合計300万円の投資に対し、助成金210万円(助成率70%)を獲得
成果
– 外国人材からの応募が月平均5件から30件に増加
– 15名の外国人スタッフを採用・定着
– 多様性のある職場文化が形成され、日本人スタッフにも良い影響
申請のポイント
外国人労働者の就労環境整備と一体的に、適切な採用広報を行う必要性を説明しました。言語の壁を解消し、正確な情報を伝えることで、ミスマッチを防ぐ効果も強調しました。
補助金で“やりたかった採用広報”に踏み出す
補助金は出発点であって、ゴールではありません。公開後の応募数や歩留まり、サイト行動データ、動画視聴の完了率などを計測し、反響の高いコンテンツの増産と弱点の改修を続けることで、投資の回収スピードは上がります。組織面では、現場社員の協力を得てSNSなどの情報発信は内製化し、採用コンサル会社や広告・制作会社は広告運用・設計の外部パートナーとして位置づけると、費用対効果は安定します。重要なのは、単年度で終わるキャンペーンではなく、“資産として蓄積される広報”にお金を置くという考え方です。
採用広報の質が競争力を分ける時代です。補助金は単なる費用軽減ではなく、やるべき投資を前倒しで実行するための背中押しになります。事業計画と人材戦略を結び、数値で語れる計画に仕立て、適切な言葉で制度趣旨に合わせる。この三点を押さえれば、「予算がないから諦める」から「制度を活用して実行する」へと発想を転換できます。まずは自社の採用課題を数字で可視化し、どの施策が制度と親和性が高いかを見極めるところから始めてみてみましょう。
採用に関する補助金・助成金のことでご不明点やご相談したいことがございましたらお気軽にお問い合わせください。